平成21年分の確定申告がスタートするが、今回の申告で、上場株式等の譲渡によって生じた損失額を上場株式等の配当所得の金額と通算できることに注目が集まっている。
これは、従来、総合課税または申告不要制度のいずれかの選択適用とされていた配当所得について、新たに選択できることになった申告分離課税を適用して確定申告した場合、平成21年分以後の各年分の上場株式等に係る譲渡損失との損益通算及び繰越控除が可能となる制度である。
例えば、平成21年分の上場株式等に係る譲渡損の合計額が50、譲渡益の合計額が10、上場株式等に係る配当所得が5だとすると、まず最初に譲渡損益が通算され、上場株式等に係る譲渡損失は40となる。次に、上場株式等に係る配当所得の額を上限として同配当所得から控除できるため、同配当所得の全額の5を相殺する。控除しきれなかった上場株式等に係る譲渡損失35は、その翌年以後3年間繰り越すことができる。
また、平成20年以前から平成21年に繰り越してきた上場株式等の譲渡損失については、まず、上場株式等以外の株式に係る譲渡所得から控除し、次に上場株式等に係る譲渡所得から控除するが、それでも控除しきれない譲渡損失について配当所得と通算できる。
ただし、申告分離課税を選択する場合には、配当控除は適用できないので注意が必要である。
なお、平成22年1月1日からは、特定口座内で、配当と上場株式譲渡損との損益通算制度が施行されることになっている。
提供:税務研究会・税研情報センター