未曾有の不況の中、業績が低迷している企業は多い。自動車関連の企業なら「外部環境が要因」と言っても差し支えないだろう。だが、それ以外の業種でも、経理部長は「景気が悪いから」、営業部長は「売れる商品がない」、生産部長は「開発のコストダウンが足りない」などと言い、弁解に終始している。もっと言えば「傷のなめ合い」になってしまっている。
これでは打つ手の統一感がなくなる。要因・課題の不統一が問題だ。要因や課題を部門別、階層別にマチマチに考えているようでは、打つ手のスピードも遅れて魂も入らない。筆者は常々、「外部環境を受け入れる、原因は自分論、課題を絞り込む、対策は今すぐに打つ」ことが重要だと提言している。
1.外部環境を受け入れよ
顧客の嗜好はどう変わっていくのか、何を考え、何に困っているのか。最重要事項は、顧客の動向である。そして需要動向・商品動向・ライバル動向を素直に受け入れることだ。
2.原因自分論
今の企業の低迷は、「好景気に酔った」ために脇が甘くなったのが原因であるケースが多いように思う。業績低迷は何が要因かを、原因自分論で考える必要がある。
3.課題を絞り込む
課題は何か?短期・中期、全社・各部門で絞り込む。重点が明確になり、全社を動かすきっかけとなる。
4.対策を今すぐに打て
「まだ早いが遅くなる」と言うように、“まだ時間はある”とノンキに構えていると手遅れになる。
今、多くの企業では来期に向け、方針の見直しに動いていることだろう。その際はこの4点を念頭に置き、最悪を考えてすぐに手を打つことだ。
例えば、(1)雇用を守り人件費は粗利益に連動させる、(2)手元流動性資金10億円の確保に向けて資産を圧縮する、(3)来期の上半期中に仕入れコストダウン3億円を確定させる、(4)営業部門は○○分野を開拓して5億円を達成する、などの緊急方針を役員会で統一する。
こうした全社方針は社内にメッセージとして発信されるが、言葉だけでは弱い。そこで、緊急対策チームの発足を提言したい。「○○分野開拓緊急プロジェクト」「3億円コストダウン緊急プロジェクト」など、役員と部門を横断した力のあるメンバーでチームを立ち上げ短期勝負で対応する。チーム発足が強力なメッセージになる。
この局面は、役員の出番である。役員が前面に出て対処すべきだ。「人は艱難は伴にできるとも、富貴は伴にできず」(高杉晋作)。役員は本気になって、この艱難に挑んでいこう。
提供:ミロク.TVS記事より(株式会社タナベ経営)