企業経営の三要諦は「戦略・戦術・戦闘」であり、企業の業績向上や成長発展には、これらが必須条件である。

戦略は企業目的・目標を達成する方向性・方針だ。この戦略は、論理的であると同時に現実的なものであり、社員にとって納得性の高いストーリーであれば、社員のモチベーションは高揚する。

次に戦術である。いくら素晴らしい戦略・方針であっても、それを具体化して実行するための仕組み、仕掛けができていなければ、成果は上がらない。

最後は戦闘である。中小企業においては、この戦闘力がなくて、戦略・戦術を実行できないことが多い。「誰」を戦略・方針の実行推進者にするかで成果は大きく変わる。

戦略の実行責任者を誰にするかは、経営トップの人事権であり、最重要の経営判断でもある。能力が不十分で実行できない人もあり、方針に従わないで実行しない人もいる。

多くの経営者が知る中国の古典『三国志』に出てくる有名なことわざに、「泣いて馬謖を斬る」がある。

馬謖は孔明が優秀と認め、かわいがっている若手の将校であった。ある遠征のとき、馬謖は大軍の司令官に抜擢され、大きな戦いを行った。しかし、馬謖は孔明の指示した戦略に従わず、自己の判断で大軍を指揮し、相手軍の戦略にはまって大敗。遠征に失敗し、孔明の陣に逃げ戻った。そして、孔明の戦略を無視して大敗したことを反省し、許しを乞うた。

孔明は、馬謖は将来、国を支える優秀な人材であると評価していた。たった1回の失敗によって、ここで斬罪に処すべきか。それとも許すべきか。孔明は決断に苦しみ、迷った。

しかし孔明は、これを斬罪にしなければ、指示した戦略を実行しなくてよいと皆に思われ、軍律が乱れ、国敗れると考え、泣きながら馬謖を斬罪に処すように指示した。

このような事例は、現代の企業経営の現場でも多く見られる。経営トップは、担当役員を選任する権限を持つ半面、「できない」「やらない」を厳しく判断しなければならない。解任・降格などを全く行わない企業は、戦闘力も弱くなり経営破綻に至る。

                           ” 会計事務所トータルバリューサービス”より