1929年の世界大恐慌の際、当時アメリカ大統領であったルーズベルトはこう言った。
「恐慌の時代、最も恐れるべきは、『恐れそのもの』である」
リーダーは、100年に一度と言われる「恐れ」に対し、「不安感」を募らせているだけではいけない。この危機をチャンスに変えてこそ、真のリーダーではないだろうか。そのための心得として、次の5つを確認したい。
1.「志」を再確認する
不況は、自社・自身の志や事業観を再確認することのできる時である。不況下では、それらが不明瞭になり、迷いが生じてくるものだ。それでは危機を乗り越えることはできない。「今、何が正しいのか?」という本質を自らに問うことによって、自身の志を再構築するチャンスなのである。
2.経営のぜい肉を削ぎ落とす
業績の良い時ほど、アレもコレもと手を出して、組織に多くのムダを抱え込んでしまうものだ。不況になると、そのムダが目についてくる。それが「ぜい肉」だ。この機会に思い切って削ぎ落とすこと。捨てることで、次の打つ手が見えてくる。まず、捨てよ。
3.中期ビジョン(戦略)を練り直す
「不安感」ではなく、「正しき危機感」を生み出すための手段は、「中期ビジョン(戦略)を練り直す」しかない。暗いからこそ、明かりが必要なのだ。好況時のビジョンなど「夜明けのアンドン」である。今こそ、中期ビジョンが必要なのだ。真のリーダーは「未来への明かり」を示せ。
4.人材育成に注力せよ
逃げ出す人、竦む人、不況に立ち向かう人など、危機の際の行動はさまざまだ。ピンチの時こそ、人材の本質が見えてくる。危機感を道具として人材育成に注力すれば、効果絶大である。「お城はわが身の精神」が浸透するだろう。不況ほど、教育効果が高まる時期はない。
5.不況の時こそ事を起こすべし。攻めよ
最後に、「不況、難局こそ、何が正しいかを考える好機である」。ムダを捨てることができれば、その資源を新しい事業にシフトするチャンスとなる。目を凝らしてチャンスを見極め、限られた経営資源を集中動員せよ。待ったなしの新しい戦略への取り組みは、真剣度も過去とは違ってくるはずだ。
進化論で有名なダーウィン博士いわく、「生き残るのは、最も強い種でも、最も賢い種でもない。変化できる種だけである」。今こそ、「変化」を試される時である。
提供:ミロク.TVS記事より(株式会社タナベ経営)