日本の高齢化が、加速度的に進んでいる。国立社会保障・人口問題研究所によると、2010
年の老年(65歳以上)人口が全人口に占める割合は23.0%。35年には34.4%、60年には39.9
%に達すると推計している。

 この高齢化はビジネスチャンスにもなる。高齢者向け衣料を中心に展開するアパレルメー
カーのA社長によると、ある地方スーパーマーケットの一角に出店した小さな販売店が、毎
年安定して売上を計上しているという。理由は、販売員の年齢が高齢者と同世代であり、接
客レベルが高いこと。加えて、立地要因も大きいという。

 ターミナル駅周辺に集積するデパートやショッピングモールに押されて、近隣の商店街は
ほとんどシャッター街と化している。衣料に関して言えば、ターミナル駅周辺の店舗は若年
層がメインターゲットであり、高齢者向け衣料を扱う店舗は少ない。

 高齢者にとっても大型ショッピングモールでの買い物はハードルが高い。一つの商品カテ
ゴリーの購入ごとに広い店内の移動を強いられるうえ、人ごみもかき分けなければならない。
さらに、店舗ははお金を使ってくれそうな若い人向けに整備されており、高齢者層にとって
はなはだ使いにくくなっているのである。

 こうした背景によって、高齢者向け衣料の市場がターミナル駅周辺ではなく、地方に存在
するようになっているのだ。

 その一方で、効率化によって家のそばで物が買えなくなり、気心の知れた店員とのコミュ
ニケーションで、自分のためだけに欲しい物を仕入れてもらうということが失われつつある。
高齢者にとってこうした要素は、魅力的なものではないだろうか。

 経営における合理化・効率化が進む中で、客層のメインから外され、我慢を余儀なくされた
高齢者層は増えていく。こうして生み出された”スキマ”に、高齢者を対象としたニッチ市場が
形成される可能性がある。高齢者向けのサービスを展開する企業は、速やかにその対策を
講じなければならない時期にさしかかっているのである。

                                    (TVS-株式会社タナベ経営)より