フランスの哲学者・アランは「人との交流において礼儀を厳守するものは、利息で暮らしていけるが、守らないものは元金に手をつける」と言っています。
社会人として、人とお付き合いする時に、マナーを守るのと守らないのとでは何か大きな違いがありそうです。アランが言っているマナーとは何なんでしょうか?
若い皆さんは、マナーを堅苦しいルールのように考えがちですが、実際のマナーというのは、相手がどうしたら楽しく、気持ちよくいることができるかを考える「思いやりの気持ち」の表現法です。
『武士道』の著書である新渡戸稲造は、「体裁を気にして行うのならば、礼儀とは浅ましい行為である。真の礼儀とは相手に対する思いやりの心が外に表れたもの。礼儀の最高の姿は愛と変わりない」と言っています。
「この人にはこう対応したほうが自分の得になるな」「こう言葉をかけるほうがよく思ってもらえるかも……」というような気持ちで人に接することは、浅ましい行為です。
「私がこの人だったら、どのような対応をして差し上げたらホッとしていただけるのか」
「私がこの方だったら、どのような言葉かけをしたら喜んでもらえるだろうか」と、相手の立場に立って考えてみましょう。
自分さえよければと考えるのでなく、「自分OK。相手もOK。」の世界を、思いやりの気持ちで行動に移していくのです。
こうして出会った人を大切にすると、結果としてあなたは相手からも大切にされます。
仕事は1人ではできません。多くの人の力を借りてできるものです。そして、多くの人の力が借りられるのは、頭の良さや顔の良さではありません。人格の力です。自分を大切にするように、人も大切にする人柄です。
「情けは人のためならず」という諺が日本にはありますが、ある脳科学者によると、愛(思いやりの気持ち)は脳を活性化するそうです。社会人として成長するためには、相手の立場や気持ちを察して行動する思いやりの気持ちが必須だといえるでしょう。
"企業実務"実務情報Seriesより